豊臣期の大坂城天守閣跡
大阪城配水池
天守閣の最上階の東から下を見ると芝生の空き地が見えます。
しかし、ここは空き地ではなく配水池なのです。
配水池ができた経緯を、お世話になった宮本先生の産経新聞寄稿文を抜粋してご紹介いたします。
【上町に学ぶ 古都おおさか再生】大阪城内の配水池 宮本直和
2009年09月08日 産経新聞 大阪夕刊 経済面
◆市民にもたらす命の水
大阪城のある上町台地は、大阪の人々にさまざまな恩恵をもたらした。
明治以降、兵部省役庁、兵学寮、教導隊、軍事病院、造兵司などの陸軍関係諸施設ができた。1日3度の「号砲ドン」が鳴り響き、東京より4カ月早く洋式の定時法が始まった。また、ここから日曜休日制も始まったという。
大阪城内(本丸)には配水池が建設され、大阪市民の安全な“命の水”が確保された。このことでコレラ、腸チフス、赤痢などの伝染病発生率が激減。近代消防スタートの契機ともなり、大阪人の暮らしの近代化を大いに推進したことは、今日、忘れられがちだ。
配水池建設の背景には、文政5年、明治10年、12年、18年の淀川大洪水後の19年、23年のコレラの大流行があった。同じ23年には「新町焼け」(西区)もあり、その防疫・防災対策の要として、水道建設の声が高まった。それまでは、淀川の水を売り歩く「水屋」や井戸に頼る日々だった。
当初、桜の宮水源地に巨大水塔を築く案があったが、最終的に軍用地・大阪城内の天守台隣接地に自然流下式の配水池(約1万7100平方メートル)の建設を決定した。大阪市の年間予算の3倍、250万円の巨費をつぎ込み、明治25年に着工。3年3カ月の歳月をかけて28年に完成した。
この時、大阪市の要請に対して、高島鞆之助・陸軍大臣は、陸軍用地の一部を「無償で貸与する」と許可している。これによって大阪は、横浜、函館、長崎につぎ、全国で4番目に水道をもつに至った。
オーストリア皇太子フェルディナントが来日した際、大阪城を訪れ、この工事中の配水池を見て、「大いなる歴史の地に、いま平和の施設が建設されている」(『日本日記』)と、高い評価を残している。
あの“20世紀最高の産業人”松下幸之助が、船場ででっち奉公に励み、後年、新世界の通天閣近くで水道の水を飲む大八車の男の姿を見て、「水道哲学」に気づき、松下電器を世界的企業に育てたのも、大阪に水道の恩恵が行き渡っていたからであろう。
配水池建設を可能にしたものは、公のノブレス・オブリージュの精神であった。高島陸軍大臣は大阪偕行社附属小学校(現追手門学院)の創設者でもある。
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